雷の薔薇 エクレールローズⅠ

空の薔薇

あんなにも求めたものが目の前にある。






それでもあなたの名前が思い出せない。
もどかしくて…。苦しくて。
それでも思い出せないの。
覚えているのは…。覚えているのはただひとつ。





真っ直ぐな瞳。






ただひとつの真実。






あなたの名前が思い出せない。
それはきっと私の罪の証。





こんなにも求めたものが目の前にあるのに…。






私を助けた彼は…。
炎の天使…。
私を助けた神父様…。






神父様…。神父様…。






昔の弱い自分がそこにいた。無垢な何もないあの頃。






交わりながら…。あの頃に戻っていた…。






雷が彼を掠めた。






炎の剣はそのまま、真っ直ぐ飛んできた。己を犠牲にして。






ただひとつの真実。
それはわからない。






ただ一瞬…。許しが欲しかった。





名前が思い出せない。






剣を下ろした。






胸には鈍い光しかない。





炎の剣が貫いた。






赤い、赤い…。花びらが散る。






赤い唇はうっすらつりあかる。





「名前は?」






抱き寄せ耳元に囁いた。





赤い花びらが散る。
黒い天使は花びらに変わる…。





青白い雷が走る。






全ての終焉を意味した。
地上と地界を繋ぎ、扉が閉まる。





魔王の叫びが聞こえた。怒りかそれとも悲しみか…。





地上の白い天使の噴水に浮かぶ無数の赤い花びら。






嗅いだことのない香りがした。






拾う白い天使は空を見上げる。





「主よどうかお導きください。」





雷は花びらに…。






何事もなかったように地上の時間は回り出す。






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