雷の薔薇 エクレールローズⅠ
エピローグ 少女と神父
「神父様!」






屈託のない笑顔で呼ぶ少女。親しみを込めて彼女が呼ぶ。
「イリス…。なんて早起きなんだ…。まだ鳥も起きてない。」






「だって紫の朝靄は朝陽が昇るちょっと前が綺麗なんだもん…。」






小さなシスターは口を尖らせた。






「はいはい。では連れていってくれるかな?」






嬉しそうに手を引っ張って行く…。






朝の寒さに身を強張らせ、毛布で彼女を包む。






朝陽が昇る。
朝焼けが綺麗だ。
雲が太陽に照らされ色を成していく。






朝日を見つめる彼女の横顔が美しい。少女から一瞬大人の顔になる。
長い睫毛に赤い唇、白い肌。






「綺麗だ…。」






「天使が雲から降りてきそうでしょ?」






「…。そうだね。イリスは天使を見たことあるかい?」






「一度だけ…。だからあってみたいな…。」






小さなシスター。私は…。まだ真実を告げることは出来ない。






「神父様…。ありがとう。」






微笑む彼女に微笑み返す。





紫の朝靄はピンク色へ…。オレンジから黄金…。そして…。純白の光に変わる…。






人間は不安定な存在。故に選ぶことが出来る。






天使は神の使い、故に選ぶことが出来ない。神の意思を果たすのみ。






秘めた想いが君を変えてしまったのか…。それとも私が変わってしまったのか…。感情は人が持つもの。





許しを得られるならば君の魂へ…。






夢から覚める私は…。過去に捕らわれている。
天使は死ぬことはない。





空に光が走る。






稲妻が何処かで鳴っていた。空に華が咲く。






夜は開け、天は光の中に。
朝焼けを見るたび、君の笑顔が浮かぶ。





あの頃には戻れない。





夢は終わらず私の心は血を流す。
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