恋ノ神
この恋が成功しないと、私は星で自分の願いを叶える気にならない。
友紀に一つでも幸福を届けたい。
そう思う私の目には、10個貯まった星が映る。
あの星はゼウスが創った、邪悪な願い意外なら何でも叶う貴重な代物。勿論、私が人のために願えばその願いは叶う。
一瞬、これを使おうかと考えたが、すぐに首を振る。
「ダメだ」
目を固くつむりながら言う。自分の願いを他人に使いたくないのもあったが。
私は星の力で幸を生き返らせることを考えたが、過去に友紀と似たような願いの依頼人の、恋を叶えられなかった時の泣き顔がいくつも脳裏を過ぎる。
明日に処刑になる無罪の恋人と救って貰えなかった女。
死んで欲しくないのに戦争に行かされた男を想う少女。
そして…
『ツツジ…!』
想い人を病で亡くした優の悲しむ様子が浮かんで来る。
悲しい思いをしたものが他にも居るのに、その中で一人だけ叶えるのは公平ではない気がする。
そうして悩んでいると、背後から高い声がした。
「叶えてやってよ。神様。」
後ろを向くと、半透明の可愛い少女が笑顔で立っている。
その少女には十分見覚えがあった。
「ツツジ?」
「正解」
そう、ツツジの霊。
「何でここに…」
「死神の男の子に許可貰って来た。」
ハディスか。
彼らのいる世界からは私達の世界も覗くことができる。
「黄泉の国から私を見てたのか。」
「うん。悩んでる所も」
彼女を見ると、いかにも元気そうに笑う。
「あの幽霊のお兄さん、生き返らせてあげれば?」
「でも、それじゃ他の叶えられなかった人が…」
「何も不公平じゃないよ。」
「しかしっ、現に君も」
「神様」
私の言葉を遮るようにして、ツツジが言った。