傷だらけのラブレター



お医者さんの妙な声色に、引き寄せられるように顔をあげる。




目の前には、目尻が深いメガネをかけた、いつもと変わらないお医者さん。





…そう。いつもと変わってない、はずなのに。



私にはどこか、変わっているように見えた。





「やっぱり、手術を受けるつもりはないのかい?」

『……。』





お医者さんが半確定的な言い方をするのは、きっと私がなんて答えるか、わかっているから。




実際、私の中で返すべき答えは決まっている。



それでも、私は一瞬だけ考えるような素振りを見せた。




< 39 / 459 >

この作品をシェア

pagetop