屍都市Ⅱ
パトカーは製薬会社の前に停車する。

…既にライトは割れ、ボンネットは歪み、車体のあちこちに血痕がこびりついている。

ここに辿り着くまでに、無数のゾンビを轢き殺してきた。

死をも厭わない恐れ知らずの亡者達は、躊躇いもなく颯太の運転するパトカーの前に歩み出る。

そして颯太も、躊躇いもなくゾンビを撥ねた。

彼の名誉の為に言うならば、彼は無慈悲な人間ではない。

マスコミといえば、他人のプライベートに土足で上がりこみ、平気で私生活さえもネタにすると思われがちだ。

だが颯太は新聞記者にしては珍しく、礼儀は弁えた男だった。

彼が変わったのは半年前のあの『美原市大災禍』で家族を奪われてから。

…俺から家族を奪った連中から、今度は俺が何もかも奪ってやる。

隠蔽している秘密も、闇に葬り去った真実も、ひた隠しにしてきた事実も。

俺が全て奪い取って、白日の下に曝け出してやる。

そう決めたのだ。

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