HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■万策尽きて

お店の周り、駅前、近くのコンビニ…
恭平の行きそうな場所で、私が思いつく所なんて沢山はなかった。

私は本当に恭平を知らない。
恭平を何も解っていなかった。


諦めて引き返そうとした時、あの公園が視界に入った。
今日も綺麗な花が揺れている。

『そういえば…』

別れた少し後。
ここで恭平に会った。

手を合わせ真剣な顔付き。
今思えばあの時、何で不思議に思わなかったんだろう。
この事件と恭平の関係について…

【綺麗な奥さんだったよ】

どうして恭平は「彼女」を知っていたの…?

一体どうして…



疑問を抱えながら私の足はある場所へ迷いなく進んでいた。

恭平の住む、あのマンションへ…

インターホンを何度鳴らしても、人の気配はない。

そうだ。
自分のお店をほったらかしにして家でのんびり過ごす。
恭平はそんな人じゃなかった。

恭平…
何処にいるの…?

「万策尽きた」
きっと、こういう時に使うんだろう。

『…ハァ…』

諦め溜め息をつきながらドアノブを握る。
その瞬間、少しだけドアノブが回った。

開いて…る?

ノブは回る。
扉は少しずつ開く。

入っていいわけがない。
だけど入らずにはいられなかった。

『…恭平? いるの?』

この部屋の奥で何が待っているのか…
この時は考えもしなかった…
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