猛獣に射抜かれる様な愛


結菜は歯を食いしばり今にも溢れそうになる涙を必死に堪えた



“私は泣かない。だってあの時、父と母に約束したから”



“父と母と姉が安心してあの世で暮らせる様に、泣かないって決めた”



“私は独りでも平気。家族から貰った大切なこの命、絶対に無駄にはしないし、私は負けない”



結菜はソファーで独り頑なに再度誓った刹那、ガチャリと矢斗の部屋へ繋がるドアが開いた



そこへ視線を向ければ矢斗が黙り込んだまま部屋から出て来て何も言わず結菜の傍へ歩み寄る。



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