猛獣に射抜かれる様な愛


待ち合いの椅子では二人共言葉を交わす事無くただ刻々と時間が過ぎて行く


結菜は己を責めていた。あの時何故、犯人の車を確認しなかったのだろうか…と


あの時、もっとちゃんと確認していればこの様な事故は防げたに違いないと、同じ事ばかりが頭を過ぎっていた


暫くして検査を終えた医者が戻って来ると、二人の傍へと歩み寄り言葉を発した




「命に別状はありません。幸い傷は脳まで達していませんでしたので後遺症の心配も無いと思いますが今から傷口の消毒と縫合の手術を行います。手術の同意書にサイン出来る身内の方に連絡して頂いて来て貰って下さい」


「わかりました」




医者は再び診察室へと入って行くと、二人は顔には出さぬものの同時にホッと安堵した。



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