微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)

「……少し、熱がありますね」


クリアになった視界の先に見えたのは、見慣れた無表情――


「よ、芳野さん……?」

段々と、意識がはっきりしてくる。

自室のベッドの横、芳野さんは中腰になるようかがみ、仰向けに寝ている俺の顔色を窺うよう、じっと見ている。

確か……自転車を届けてもらった後、勉強してて……


「あ……ご、ごめん!」

芳野さんの手を握りしめている事に気付き、慌てて離す。


「お飲み物をお持ちします。そのまま、お休みになっていて下さい」

ポンポン、と布団を軽く叩いて部屋を出て行く芳野さん。


……。

芳野さんが、優しい……

ような、気がする。


朝は少し体がだるい程度で、たいした事はないと思っていた。

だけど、お昼過ぎ辺りから気分が悪くなって、ベッドに横になってたんだけど……

そのまま、寝入ってしまったようだ。


気分は大分良くなったけど、体のだるさは抜けていない。

熱も出てきたようで、前に風邪をひいた時と同じように、体の節々が鈍く痛む。

体のだるさは、風邪の初期症状だったみたいだ。
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