水晶玉は恋模様
授業中、圭子は何度もメモを送ってきた。
『どうしたの?』とか『平気?』とか。
メモを回すたび、圭子の隣の男子はうんざりした顔をしていた。
私は圭子のメモに、返事を送らなかった。
それどころか、どんどん机にやってくるメモに、気付かない振りをした。
圭子はますます心配そうな顔をして、授業もそっちのけでメモを書いていた。

昼食の時間、いよいよ圭子と望は迫ってきた。
私は他の人と離れた位置に机を持ってくると、
2人に心の内を話す事にした。

「……それで、どうやら私……高沢が好きみたいなの」

全てを一気に話すと、何だか心が軽くなった気がした。
やっぱり何でも話せる親友って、良いね。

「で、高沢って誰だ?」

呑気な質問をしてきたのは望。
私がそれに答えないので、圭子が『昨日ジャムくれた、あの人』
と言いながら、高沢のテーブルを指差した。

「あぁ、アイツか。確かに整った顔立ちだけどさぁ……」

望はそう言って口をつぐんだ。

「何?最後まで言ってよ」

私に言われて、望は気まずそうな顔をする。

「牡丹が顔だけで惚れるとは思わなかった……」

望はそう言って顔を歪めた。
この本心を言うのに、結構な勇気を要したのだろう。
そんな望の気も知らず、圭子はそれに頷いていた。

「そうだよ、相手がどんな人なのかわかんないうちは駄目だよ」

圭子のようにスパッと言いたいことが言える人は、
きっと苦労しないんだろうな。

私は圭子に色々言われながらも、高沢のほうを見て胸を高鳴らせるのだった。
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