火葬
火葬
 火葬場には、兄を見送るために親族や友人達が集まっていた。

 もうすぐ兄は火に包まれて、白い灰になってしまう。
 目に焼き付けるように、私は兄の顔をずっと見ていた。
 皆は、次々と最後の別れを済ませてさがっていくというのに、私だけが、どうしても棺から離れることが出来なかった。

 兄に、「さようなら」を言うことが出来なかった。

 最後まで別れを告げられないまま、ついに火葬の時がきてしまった。
 兄の遺体の入った棺が、台車と共にゆっくりと火葬炉の中へと入っていく。
 機械音と共に火葬炉の扉が閉まっていき、兄の棺が見えなくなる。

 点火の瞬間を見ていることが出来ずに、私はその場から逃げ出してしまった。
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