火葬
 兄に「さようなら」も言えず、見送ってあげることも出来ないなんて。
 私は、自分が情けなくなった。

 大好きだった兄――いつも空を眺めていた兄。

 ふと私は、兄が大好きだった空を見上げた。
 その時、私は空へと還っていく煙を見た。
 振り返ると、煙突から煙がもうもうと立ち上っていた。

 あれは、兄の火葬炉だ。

 青い空に吸い込まれるように、煙は空へと昇っていった。
 火に葬られて、空へ、空へと、兄を運んでくれていた。
 兄の大好きだった、あの広い大空へと。
 私はまた、泣いていた。
 大粒の涙を流しながら、空へと還っていく兄を見送った。

「さようなら、兄さん!」

 私はようやく、兄にお別れの言葉を贈ることができた。


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