あひるの仔に天使の羽根を
 


「みなさんは、ぼく達をどう思いますか?」


旭くんが真摯な顔を上げ、あたし達を見渡して言った。


「少なくとも"悪魔"ではないわ」


あたしの答に、異論を唱える者はなく。


「"天使"だね」


月ちゃんの翼を撫でながら断言した由香ちゃん。


「気持ち悪いと思いませんか?」


まだ執拗に聞いて来る旭くんに、


「別に?」


あたしは率直に応える。


「天使か悪魔かと聞かれれば間違いなく"天使"だけど、旭くんだって月ちゃんだって、翼があるだけであたし達と何1つ変わらないじゃない。

どこか違う処はあるの?

あった処で、それが何?

どうして線引きしたがるのか判らないけれど、あたしにとっては君達は可愛い子供、ただそれだけだよ?

余計なことは考えなくてよろしい」


そうにっこり笑って頭を撫でれば、旭君は嬉しそうに顔を綻ばせた。


それは本当に天使の笑顔というもので。


胸がきゅんとしてしまった。


それでも。


やはりあたしにとって1番の天使は、


――芹霞ちゃん、だあい好き。


8年前の櫂以外にはありえないわけで。


「……何だ?」


今の櫂にはその面影はないけれど。


あたしの記憶の中で、櫂は純白な翼を持っている。


そんなことを思っていたあたしは、


「ああ、やはり変わっていない」


そんな旭くんの言葉は、耳に届かなかった。



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