あひるの仔に天使の羽根を
 
「落ち着け、いいな芹霞、落ち着くんだ!!!」


本当に落ち着いて欲しいのは俺の心。


感じるのは嫌な予感しかないから。


芹霞が俺から離れる、と――。


「何馬鹿なこと言い出しているか判らないが、俺はそんなことは思っていないから」


しかし芹霞はぶんぶんと頭を横に振って。


「櫂にそこまで言わせてしまってごめんなさい、ごめんなさいッ!!!」


「芹霞ッ!!!」


思わず怒鳴れば、芹霞の身体がびくんと震えた。


「お前に俺は……いらない存在なのか?」


俺は聞いた。


「お前は……俺が欲しくないのか?」


震えてしまった声に…芹霞から返答がなく。



「だから…俺が信用できないのか?

だから俺を捨てるのか?」


芹霞からの反応がない。


ない、ない、ない、ない!!


「俺が――

必要だといってくれよ。


なあ……

お前にとって、俺って何だ?


どうすれば――

俺は捨てられずに済む?」


崩れ落ちそうな身体を必死に支え、芹霞の顔を覗き込む。


「捨てられるのは――

あたしの方だよ?」


そう、芹霞が言った。

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