あひるの仔に天使の羽根を

・無神 桜Side

 桜Side
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私に割り当てられた"神格領域(ハリス)"には、石の扉を潜ることもなく…以前破壊した魔方陣と、破壊しかけた魔方陣と、手つかずの魔方陣があるだけ。


石の扉に行き当たらないのは意外であったが、意地悪い笑みを浮かべる緋狭さん曰く、此処は22本の道があり、その全てを把握していれば、多少回り込むことになったとしても、特別に扉を開ける必要もないらしい。


更には、過去私達…或いは"誰か"の移動によって開けられた名残も利用すれば、比較的自由に行き来出来るらしい…ということは榊も知っているらしく。


今頃玲様は、端麗の顔を少し悔しげに歪ませているだろう。


ただ…"混沌(カオス)"においては、"中間領域(メリス)"との確執がある為、扉で封印されているらしい。


担当はあの馬鹿蜜柑。


今、櫂様の闇石はあの男が握っているけれど、大体あの馬鹿蜜柑1人で何が出来るというのか。


凄く――不安で仕方が無い。


「ああ、だから精神年齢の高い…最強の相棒をつけてやっただろ?」


緋狭様はしたり顔だけれど…どんな強い身体能力を持っていようと、相手は所詮子供だ。


「ふっ…。子供か。目に見えるのが真実とは限らんぞ、桜?」


それはやけに意味ありげな笑いで。


子供ではない、と――?


そんな時、玲様のグループから連絡が来たようで。


裂岩糸を駆使し最後となる魔方陣を破壊して、この領域での仕事を終えた私は、やけに足取りが重く息が切れていることに気づいた。


体調なのか、地形が変わっている為か。


「桜。もしもの為に持っていろ」


緋狭様が私に投げて寄越したのはあの小瓶。


私の傷の痛みと、幻覚を抑えるα-BR。


指揮官たる氷皇に縁がある榊経由で、緋狭様が持ち得た…紫堂の研究所の薬。



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