あひるの仔に天使の羽根を
「…私でいいのか? お前は自分以外を信じぬ性質(タチ)なのだろう?」
含んだような笑いに、私は…
「緋狭様は紅皇であると同時に、芹霞さんのお姉様で…皆の希望の象徴。
だから桜は…縋ってみたいのです。皆が師事して敬服する緋狭様なら、きっと私も変われると。
このままでは、この先…敬愛する櫂様を守りきれません。
櫂様は…桜を信じて下さったのに…このままでは、私は!!」
無力さ。
それが思い知らされて。
櫂様を元に戻す時でさえ、私は傍観者でいるしかなかった。
玲様も馬鹿蜜柑も芹霞さんも。
ちゃんと櫂様に対する"立ち位置"があったのに、私は何もなくて。
私だって居る。
私だって此処に存在している。
どんなに主張したとしても、"無力"だからこそ味わった疎外感。
温かな…羨ましいあの空気に染まれぬ私は、どこまでも"皆が居る世界"に弾かれた異質な存在で…混ざり合うことが出来ない。
私も必要不可欠だと…そんな立ち位置になりたいと思えばこそ、より強く実感してしまう。
「独りのままでは…限界があるのです」
私は項垂れた。
「今のままでは…桜は大切な人達を守ることは出来ません」
櫂様。玲様。馬鹿蜜柑。
「芹霞さんも」
――桜ちゃん、大好きだよ?