あひるの仔に天使の羽根を
 

「だけど。"女"の腹から生まれたおかげで、"女"に殺されて…何と惨めな人生だったんだろうね、陽斗は。はははは」


俺は偃月刀を強く握りしめる。


「惨め…? お前…何言ってんだよ」


腹が立つ。


「お前…陽斗のこと、何にも知らないだろうがよ!!?」


どんな扱いあれば"人間"だ?


人間としての三大本能と、生殖機能奪われて。


利用されるにいいだけ利用されて。


最後まで天涯孤独だと思い込んでいた陽斗。


チビ陽斗には、双子も同種族も居るだろうがよ。


おまけに部下まで引き連れて…。


「お前…あいつと芹霞のこと、判ってないだろうが!!?」


孤独な陽斗が、"人間"を全うできたのは…芹霞という"女"の存在だ。


俺は……


陽斗と芹霞を穢すチビ陽斗を、許すことが出来なかった。


「誰が憎い、誰が不幸だ…そんな自慢して何だっていうんだよ!!?」


俺は愚鈍で馬鹿で。


何1つ"真理"というものは理解出来てねえけれど。


――如月煌と名付けよう。


俺に"人間"と"愛"を教えてくれたのは、


――あんた、何で笑わないのよ!!?


神崎姉妹…人間の"女"なんだ。


――うわっ、香水臭っ!!


そして俺の逃げも…"女"だったけれど。


俺はハードボイルドな"漢(オトコ)"に憧れて、女なんていう女々しい奴になりたくはねえけれど、だけど…そんな女々しい部分に助けられてきた事は事実だから。
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