あひるの仔に天使の羽根を
 


何か――

皆の顔が怖くて、あたしは久遠に抱きついた。



だけど。



「だから。真実じゃなきゃ必要ねえんだよ!!!」


オレンジワンコが、引き剥がすようにあたしを…胴体を持ち上げた。



うわ、宙を飛んでいるみたい。



ねえねえ見てみて、久遠。お兄ちゃん達。


あたし、天使になったみたい。



――ムシリトラレタハネ。


ずきん。


――セツナサマアアア!!


また頭が痛んだ。


「じゃあどうなさいます? 貴方に解決策でもあると?」


「ああ、俺は確かに馬鹿だけどさ。櫂や玲のような知恵も力も何にもねえけどさ、俺だけが芹霞と同じ屋根の下で暮らしてきたんだ。

俺にだって、芹霞と2人で培ってきた"歴史"があるんだ!!!」


突然――

オレンジワンコはあたしを肩の上に掲げて遊んでくれた。


高い、高い!!!


頭が痛いのも薄れ、きゃっきゃきゃっきゃと喜んでいたら。


「俺はな、ガキの扱い方なんぞ知らねえんだよ。

判っているのは…ガキの頃の…緋狭姉の恐怖だ」


ワンコはそう言うと、



「何ころっと忘れてやがんだよ、この阿呆タレが!!!」



ペンペンペンペン!!!



あたしのお尻を叩いた。

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