あひるの仔に天使の羽根を
 
少年は思う。


美しい姿態を忌み嫌った、各務の次期当主。

自らの親と祖父を唾棄した彼にとって、その存在は"醜さ"で。


だとしたら、苦しみ続けた彼に言葉をかけるとすれば。


醜いのは、彼という「あひるの仔」ではなく。


「醜いあひる」の、唯の子供にしかすぎないと…


そういってやりたい気がした。


自分たちを影から救い続けた彼は。

少女を待ち続けた健気な彼は。



「天使は…目に見えるものではない」


「え?」


「心にいる。どんな姿であっても」


少女は思う。



――芹霞ちゃあああん。


8年前の少年の姿。


天使のあの姿は、消えたわけではなく。


ずっとずっと、少女の中で生き続ける。


どこまでも一途で可愛い天使。


「そうだね、あたしが信じる限り…


何処に居ても、天使は心に生き続ける。


その羽根は…あたしに舞い落ちてくる。いつでも近くに居るんだよって……」


そう…笑った。







『あひるの仔に天使の羽根を』

Fin.
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