あひるの仔に天使の羽根を

陽斗が、何かを言っている。


左に進んだ方がいいの?


どくん。


陽斗がまた騒ぐ。


だとしたら――


「まっすぐに行こう」


陽斗は大人しくなった。



あたしは、あてにならない自分の勘より陽斗を信じることにした。


あたしと陽斗は一心一体だから。


陽斗があたしを騙すはずはない。


「ね~神崎~。先刻から"まっすぐ"ばかりだけどいいのか~!!?」


由香ちゃんの声。


「いいの。それに旭くんも言ってたでしょ!?」


――ここを出たらまっすぐです。

――惑わされずに進んでください。


「あたしは信じるの。旭くんも、陽斗も」


あたしの強い語気に、誰も何も言わなかった。



< 161 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop