あひるの仔に天使の羽根を
蔦を掴んで外に出てみれば、月が煌々と輝く夜空が広がり、しんと静まりきった空気がどことなく神聖な静謐さを伝える。


「ここは何処?」


芹霞さんがあたりをきょろきょろしながら言った。


青臭い、生い茂る植物の匂い。


"無知の森(アグノイア)"のような場所なのか。


特に危険な気配は感じない。


草を掻き分けて進めば、道らしき場所に出る。


道といっても舗装されていない自然道だ。


芹霞さんはよく周りが見えていないらしい。


道の右側に寄り、右手で土の壁を触って歩き始めたかと思うと、


「きゃああああ」


突如悲鳴を上げた。


「危ないッ!!!」


玲様が、沈みそうになった芹霞さんを片手で抱き留める。


からからと何かが落ちる音がした。


土の壁は途切れていたようで、闇に隠されたその部分は、危なくも断崖と化していた。


暗闇越しに推し量る深さは相当なもの。


「俺達、確か地下を潜っていたんだよな?」


煌のぼやきも、今回は納得出来る。


地下から少し上っただけなのに、予想以上に高い場所に行き着いたのだから。


今ひとつ、"約束の地(カナン)"の地形を把握出来ない。


「あそこに明かりが見えるねッ!!」


遠坂由香が促した先には、聳え立つような建物がある。


方向的に、この崖を降りれば、行き着けるかも知れない。




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