あひるの仔に天使の羽根を

・着床

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今――何時だろうか。


夜光塗料がついている腕時計が指す時間は17時。


ありえない。


時計はまだ狂って動いているらしい。


漆黒の夜空を見上げれば、夜中の11時にはなっていると思う。


しかしお腹はあまり空かない。


色々な意味での疲労が、大きすぎたせいだろうか。


月が出ているとは言え、闇の冥さは変わらない。


闇の中で感じる気配だけが、存在の頼りとなる。


鏡の迷宮の名残を引き摺っているのか、

気を許せば、あたしという存在さえもが闇に惑いそうで。


必要以上に気を張り詰めて歩いていく。


先頭には桜ちゃん、後方には煌が立ったのは会話で判ったけれど、間に挟まれたあたしの隣が誰なのかはよく判らない。


だけど気配から察するに、あたしの隣は玲くんだ。


櫂は――


ずっとあたしを遠くから見ていたから。


弾くように遠ざけてしまったのはあたしだけれど、


いつもの立ち位置でないのは何だか居心地悪い。


そこまで感じる程、あたしと櫂はずっと一緒に居たんだと今更ながらに思えば、


どうして櫂とあんなことをしでかしてしまったのか悔やまれて仕方が無い。


このまま離れてしまうのだけは嫌だ。


あたしは櫂を嫌っているわけではないのだから。


煌に関してもそうだ。


どんな話があるのかは判らないけれど、

今までのあたしの態度が真剣味がなかったというのなら、

誠意を持って煌の話を聞こう。


時間が経つにつれ、あたしはそう思うようになった。



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