あひるの仔に天使の羽根を
 


「エ、エロって、実際お前の中から、スケスケ……」


「真っ赤な顔で指差してスケスケ、スケスケ言うなッ!!! あんなの緋狭姉の仕業に決まっているでしょうッ!!! あたしはきちんと清純派の白いフリフリよッ!!!」


「フリフリ……」


駄目だ、俺……鼻血出そう。


「想像すんな、馬鹿ッ!!!」


芹霞は完全に怒って俺を払い、スケスケを詰め込んだボストン持って、部屋から出て行こうとした。


俺を1人残して、出て行こうとした。



「待てって!!!」


俺は思わず芹霞を引きとめ……そしてやはり足元を邪魔する荷物によろけて、芹霞の腕を掴んで一緒に傾いた。


ベッドの縁に芹霞の頭が当たりそうだったから、俺は咄嗟に片手で芹霞を胸元に引き寄せ、片手を縁にかけた反動を利用して、ベッドの上で半回転をして衝撃を和らげる。


「……ふう、危なかった。芹霞、大丈……」


言葉切ったのは、俺が組み敷いているようなこの状況。


見下ろした先には、俺の好きな芹霞がいる。


危ないには違いない、この状況。


俺にとって危なすぎる、この状況。


「……芹霞」


やばい。


喉が渇いて、ひりひりしてくる。


心臓がどくどく煩せえ。


しかも"どくどく"で、思い出しちまったじゃねえかよ。


俺の手は、自然と芹霞の前髪を掻き揚げ……


俺の唇はそうすることが自然の行為のように、その額に触れた。


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