あひるの仔に天使の羽根を

「!!!」


芹霞の身体がびくっと震えたのが判った。


「すげえ…2人になりたかったんだよ、俺……」


震えているのは……俺か?


止まれ、止まれよ、俺。


だけど俺の両腕は芹霞の後頭部と細い腰に回してしまって、俺の片足は本能的に芹霞の脚を割ってしまって。


ぎゅっと抱き締めれば、嘘のように俺の欲求不満が解消されていく。


埋めた芹霞の髪から漂う、ふんわりとした匂い。


いい匂いだ。


ああ、柔らけえ。


香水女なんて比較にならねえや。


覗き込む芹霞の顔は、少し怯えていて。


凝固した視線。


抵抗しないのは、出来ないのか? 合意なのか?


俺、安心させたくて――芹霞の頬に唇寄せたら、満足してたはずの欲求が、それ以上を求めて止まらなくなってきて。


柔らかくて甘い――あの唇の味をもう1度味わいたくなって。


「……煌」


唇と唇が重なる寸前、芹霞が震える声を出した。


怯えた顔がたまらなく可愛くて。


「……寸止め、させんな」


「……煌」


「目……閉じろよ」


もう数ミリで触れ合う距離で、吐息交じりの会話をする。


それはまるで、睦み言のような甘さを含んで。


芹霞と出来るなんて、夢みたいだ。


「煌……怖い」


煽るなって。


俺の理性……木っ端微塵にする気か?


「余裕ねえんだよ、怖くても受け止めれよ」


すげえ可愛い。


もう俺、我慢できなくて――



「櫂の目が、怖い……」



あ!?


そう思った時、脳天にきた慣れた衝撃。



「この――


――ボケがッッッ!!!」



キレた桜と、



「粛正決定」



にっこりえげつねえ顔で笑う玲に、鳩尾に容赦なく拳を入れられ、



「……」


凍て付くような絶対零度の眼差しを無言で向けてきた櫂に、芹霞を奪われた。


俺――欲求不満だ。


ああ、凄く……情けねえ。



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