あひるの仔に天使の羽根を

考えてみればあたしは、櫂に詰られる謂れはないはずだ。


堂々といつも通りにしていればいいはずなのに、何だこの罪悪感。


櫂に対して悪いことをしてしまったという、居心地の悪さ。


何に対して悪いことをしたと思っているのか、自分自身の真情を分析できない。


ただ、懇願したい気分になる。


お願いだから離れないでと。


これ以上、あたしから離れていかないでと。



――芹霞ちゃん、大好き!!


櫂が…8年間の役目を終えたからと、離れていかないだろうか。


その不安は常に心に付き纏っている。


実の処、あたしという存在は櫂にとってお荷物だったろう。


それを悟られまいと、普通に接してきた櫂の精神力は凄いと思う。


だけど。櫂を縛るものがない今、櫂にとってあたしは何?


永遠だと、永遠以上だと、あたしが思う程、櫂はあたしのことをそう思ってくれている?


心の何処かで思うんだ。


今の櫂は、あたしを必要としていない。


永遠なんてありえない。


だから――縋る永遠性。


櫂だけは刹那に離されたくない。


――り。



もうあんな思いは……。



――せり。






< 33 / 1,396 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop