あひるの仔に天使の羽根を
 


僕は由香ちゃんと同時に素っ頓狂な声を上げた。


「食う?」


「僕を食うつもりなんだろう!?」


「……君、日本語おかしいよ? どうしてボク達が君を食わないといけないのさッ!!! 悪いけどボクはね、世界の珍味は胃袋に収めたいけれど、人間の肉なんて全然興味がないしッ!!! 大体なんだよ、そのゾンビ的発想はッ!!! ここは日本さッ!!! 何処かの部族じゃないんだぞッッ!!!」


由香ちゃんの叱咤に、少年はびくんと反応した。


「く、食わないの……?」


「しつこいなッ!!!」


「……誤解がとけたのかな?」


僕はにっこりと笑って、少年を立たせた。


少年は胡乱な眼差しを向けて、まだ震えは止まっていないようだけれど、明らかな拒絶反応はしなくなった。


「君は一体どうしたの?」


「ぼ、僕…ゲームの抽選で当選してここにきたんだ。そしたら……」


そして少年は、僕の背後に目を向けると、瞠目した。


「やばい、あいつらだ。

僕出たくない、

全て嘘だったんだッ!!!」



そして少年は。



折角――

僕がそこの場所から救ったというのに。


男性用の扉の中に走って逃げてしまった。


余程慌てたのか、身体に纏っていた白い布地を残して。


彼は――全裸で逃げ込んだのだ。



「凄い声が聞こえたけれど、君達大丈夫か?」



同時に聞こえたのは無機質な男の声。


黄色い神父服の男達。


何なんだ、この男達は。


胸に揃いの十字架。


蛇が絡まる銀色十字架。



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