あひるの仔に天使の羽根を

・慟哭 玲side

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割れんばかりの拍手と歓声。


球場のように高い観客席がぐるりと取り囲む、円形闘技場で。


この地にはこれだけの人数がいたのかと思われる観客で覆い尽くされている。


あの奇妙な外形から想定するに、内部はもっと広く大きくてもいいはずだ。


他に部屋でもあるのか。


とりあえずは、ゲームがどんなものかが確認出来ればいい。


一般客席は自由席のようで、座っているのはどれも女性ばかり。


外界の一般女性となんら変わりが無い風貌は、些か緊張感を抱いて入り口を潜った僕にとっては、少しばかり物足りなさを感じる程だ。


そして――


「ねえ、師匠。この式典って、身内だけの発表会なのかね?」



違和感。



そう。


外界に発信する装置も人間もいない。



あれだけ。


『KANAN』の先行発表は、様々な雑誌やマスコミで盛大に騒いでいたというのに、見渡すばかりの観衆は、どう見ても"約束の地(カナン)"の住人ばかりで。


何故外界に向けて、新作ゲームを大々的に宣伝しないのだろう。


――全て嘘だったんだッ!!!


式典は、開催されている。


式典自体、『KANAN』の存在自体は偽りではない。


だとしたら。


何が事実で、何が偽りだ?


そして。


なぜ"約束の地(カナン)"の住人はここまでこのゲームに興奮するのだろうか。


格闘ゲームばかりして生活しているわけではないだろうに。


僕は。


『KANAN』という存在に、不信感を抱かずにはいられなくなった。


ずっと――楽しみにしていたのだけれど。


似ている。


2ヶ月前の"ブラッディ・ローズ"。


ゲームは餌で、実際は――。


同じようなことが、繰り返されるのだろうか。


僕は、ぎりと歯軋りをした。




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