あひるの仔に天使の羽根を

解放されて消え行く白い修道服の女。


"断罪の執行人"ではないというのなら、黄色い神父の男達に頭を下げられたあの女は、一体何者だと?


その関係を、敵の牙城で確認したかった気もある。


そして。


「……この男は顔はいい。良くて"餌"かあの放蕩息子のような"愛玩"か。"刹那様"は"断罪の執行人"にどうお命じになるのだろう?」


「しっ、その名はここでは駄目だ」


そんな神父服男のひそひそ声に。


"刹那"?


僕の脳裏に荏原の声が蘇る。


――今年で御年82歳となられる方です。

――その御名はみだりに口に出されぬよう。


どちらの刹那だ?


可能性的には、荏原が口ごもった"刹那"。

僕の心を乱す"刹那"で。



「なあ、俺達の登録はまだか?」

「俺達は"黄色"だから機会(チャンス)はまだだろうさ」

「機械に登録が済めば、参加権利はあるんだろう?」

「ああ、そういう決まりだ。それまでは"深淵(ビュトス)"での宴を愉しもうぜ」

「ああ、ようやく始まったからな」

「待ちに待ったこの土地全体でのサドンデス。教主様も粋なはからいをしてくれる」

「極めつけは祭だ。お前どちらを選んだんだ?」

「お前にも言えないよ」

「何だよそれは、あははは」



連行される僕。


無表情での楽しげな会話。


僕は何か嫌なものを感じた。


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