あひるの仔に天使の羽根を


判らぬほど腑抜けた当主でないこと願いながら、その顔を見れば。


「………」


嘲笑うかのような、酷薄さに満ちたもので。


悪魔。


その形容が一番相応しい、そんな女が嬉々と僕を見下ろしていて。


異様に赤い舌をちらつかせ、緋色の下唇を舐めた。


何ともそれは悍しいばかりの表情で。


更には。


その隣に居る須臾までも、同じ顔をしていた。


清楚の欠片もない、櫂の元にいた時とはうって変わったその容貌に。


僕は、"やはり"と受容出来る奇妙な自分を感じた。


そして。


向けられる眼差しはそればかりではなく。


大した面識もない来賓者までもが、僕を見下すかのように侮蔑の視線を投げ寄越してきて。


蔑むような眼差しには慣れている僕だけれど、さすがにこの状況でのこれは腑に落ちず。


僕は――

著しい疑念を抱く。


何か違う。


何かがおかしい。


僕の本能がそう告げた。


そして。


「"断罪の執行人"の裁きを待とう」


神父服の男の言葉に、僕は桜を思い出す。


――桜、誰にやられた!!?


――いの……しっこう…。


あれは、"断罪の執行人"と言っていたんじゃないだろうか。


僕には怒りがふつふつと湧いてきて。


僕は桜の仇を討ちたくて、もしそいつに行き着くことが出来るのならと、あえて抵抗するのをやめた。


だから僕は由香ちゃんに解毒剤を託した。

< 443 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop