あひるの仔に天使の羽根を


凶々しい気が――それから放たれていることを今更…現実のものとして認識した。


何だ、あれ?


汚臭と腐臭と鉄の臭いを混ぜたような、一段と強い饐えた臭いが鼻を襲って。



情けないが、少し足が震えた。



それなりに修羅場慣れしている俺。


2ヶ月前にはゾンビを斬りまくった俺。


8年前は生きた人間さえも殺しまくっていただろう俺だけど。



その俺が萎縮する程の、異質な邪悪な存在。



耳を澄ませば。


何かを舐める音以外にも、何か聞こえる。



「……り」




俺は惹き付けられたかのように、よろよろとそれに近づいていて。




「……り……り」



断続的に聞こえる奇怪な音。


それは鳴き声のような声音にも聞えて。


俺には――


"せり"


そう聞こえたんだ。


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