あひるの仔に天使の羽根を


「月ちゃん」


玲が鳶色の瞳に、少し冷たい光を湛えさせて微笑んだ。


恐らく玲は。


俺達を介抱する場所と道具を懸命に探していたんだろう。


この兄妹を見つけて、交渉するも上手くいかなかったのではないか。


それを成功させたのは、煌の渉外力。


子供の警戒心さえ解く玲の微笑みではなく、子供を泣かせるだけの煌の力。


玲の矜持が認めないのだろう。


「この橙色、君に何を渡したのかな?」


「な、馬鹿、玲ッ!!! いいんだってッ!!!」


真っ赤になって慌てる煌にお構いなしに、玲が更ににっこり微笑むと、


「んんとね~、これ~ッ!!!」


月もとびきりの笑顔を返して、それをポケットから出して広げた。


「これね~

月が大好きな赤いこれね~





"スケスケ"って言うんだって~」





それは赤い――


女性の下着。



小さく、いやに透けている、扇情的な代物。


一体こんなものを、何故煌は。


途端――





「煌ッ!!!」





芹霞が怒鳴った。




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