あひるの仔に天使の羽根を
 

「大丈夫だろうか……」


斜め上を向いて呟く桜ちゃん。


誰に向けられた言葉なんだろう。


「さて、敵は一掃しましたが……出口がありません。裂岩糸が顕現している間は、色々な部分を切りつけてみてたんですが、全く歯が立たない。だけど、こうしていても…酸素が減るばかり」

あたしと桜ちゃんは座り込んだ。


目の前には血の海。


そして屍。


それを眺めながら、今後のことを憂うあたし達。


「聞こえたアナウンスを信じるとすれば、解放まで30分。僕の体感では10分過ぎたってとこでしょうか。だとすればこのままではあと20分、お喋りをしていても酸素の無駄遣いですね」


「かといって黙っていて、酸欠に藻掻き苦しむなんて……」


桜ちゃんは考え込みながら、サバイバルナイフをくるくると指先で回転させて遊んでいた。


器用だから出来る芸当。

絶対、あたしは出来ない。


「ねえ芹霞さん。1つ方法があるんですけれど」


大きい目が妖しい光を湛えさせて、くりくりその目が動いた。


「なあに?」


首を傾けてその可愛い目を覗き込んだら、突如桜ちゃんが片手で顔を覆って俯いてしまった。


「……桜ちゃん!?」


慌てたあたしに、


「反則だ……こんな時に」


「は?」
< 894 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop