あひるの仔に天使の羽根を
 

「うわー、何だよ『白き稲妻』…突然動き変えるなよ!! 怒ったのかよ、何だよそのおっかない顔、だから待てって」


僕は電磁波を纏った拳を、司狼の脇腹に入れる。



司狼は身体をくの字にして、呻き声をあげたけれど、倒れずそのまま踏みとどまった。


「ふう……伊達に元"次期当主"じゃないね。あ、"次期当主"に戻ったのかな? 『気高き獅子』…色恋に迷って皆棄てちゃったものね。あ、皆に棄てられちゃったのか」


減らず口叩いて櫂を見る司狼に、櫂の顔からも表情が消え、


「うわっと、『気高き獅子』も突然なんだよ、うわっ!!!」


それは一瞬のこと。


僕の目でさえも追いつかぬ速度で、櫂は司狼の背に回り腕を捻り上げていた。



「芹霞と桜を開放しろ!!」



その声は恐ろしいほど低く。


櫂が怒っているだろうことは一目瞭然で。


切れ長の目は、絶対零度以下の冷気を迸(ほとばし)らせて。


「榊さーーーん!!!」


すっと、動く気配がした。



僕が動くと同時に、櫂も動き――



――ガシィッ。



僕と櫂の交差させた腕は、榊の足の勢いを止めることも出来ず。


僕と櫂は身を翻して、後退することで、榊の勢いを外に逃すしかなく。



腕が痺れる。



ああ、この気配。


この殺気は。



宴の終焉に感じた――あの気配。



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