あひるの仔に天使の羽根を
 
桜の消えた後も、敵の数は膨れ上がり。


偃月刀で蹴散らしても、色とりどりの"魔法"が俺の動きを遮って。


"中間領域(メリス)"の時よりも威力増してねえか?


偃月刀で叩き切れた"魔法"も、今では無理だ。


緋狭姉の腕環による"火"の力で応戦しようにも、長時間の力の放出に慣れてねえ俺はぜえぜえもんで。


2ヶ月前俺を助けてくれた、緋狭姉の攻撃専門ペットの炎の神鳥"金翅鳥(ガルーダ)"は、今回幾ら想起しても姿を現さねえし。


何処ほっついてるんだよ、主と同じく放浪癖でもあるのかよ!!


思わずそう叫びそうになったけど、緋狭姉がいつ聞いているか判らねえし。


ああ、きっと俺の窮状も判ってんだろう。


会話した時の…興奮しまくりの俺、色情狂の女に走ろうとして桜に股間を蹴られた俺……さぞや笑い転げているだろうな。


それとも、全て緋狭姉の想定内だったのかな。


そう心底ショゲたら、がくっと炎の力の威力までもが落ちて。


力ってのは、精神力に凄い影響されるらしいこと知り、慌てて気を引き締めた。


精神に波がある俺は、力の駆使には向いてねえと思う。


とりあえず単発の炎をぽっぽと生じさせて敵にぶつけるだけでも、緋狭姉の力ではそれ相当の威力はあったが、それにばかり頼ってみれば、炎が効く相手と効かねえ相手が居るらしく、俺の頭では何色の"魔法"に有効なのか判別つかねえ。


もう考えるのも面倒になって、じゃあ体術勝負と切り替え、再び偃月刀振るって"魔法"を使わせる暇を与えずに切り捨ててた処、突如俺の刀の顕現が不安定になってきて。


瞬間的に太陽石に変化して、またすぐ武器に変わる俺の石。


遠坂も苦戦しているらしい。


助けてやりてえが、機械触れば火を吹く俺は、遠坂にとって真の敵だ。


俺が残って良かったのか?


今更乍ら、そんな疑問が湧いた時、あいつが現れたんだ。




「他人ばかり頼るなよ、暁の狂犬。あははははは~」



藍色の瞳、さらに深い青色の髪。


神父服まで青い色に染め上げた、恐ろしいくらい整った顔をした長身の男。


爽やかさを通り越し、腹立たしいまでの胡散臭い笑い声。
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