その先へ
「何が言いたいの?」

「えっ?私はただ…」


初めは笑顔で誤魔化そうとした母も、無理と判断したのか急に真顔で僕のことを見た。


「お母さん、スーちゃんが嘘付いてるなんて思ってないの」

「え!?」


スーちゃんというのは僕のことで、家族や地元の友達には昔からそう呼ばれている。


「ただスーちゃんは今思春期だし、その時の感情に流されてるってことじゃないかなって。決して変なことじゃないのよ」

「…………」


期待は見事に失望へと変わった。この人とは一生かけたって理解し合えない、そこまで思えた。


「だからもう少し大人になったら…」



―バンッ―



さっきよりもさらに激しくテーブルを叩いて席を立った。


「何が変じゃないだよ!?一番変だと思ってるのはあんたらじゃん。あんたに何が分かるんだよ!?」

自分でも分かっていた、最低だと。自分が傷つかないために先に人を傷つけていることも。

食べかけのハンバーグをそのままに、自分の部屋へ戻ろうとする。


「スーちゃん…」



―バンッ―



母の声をかき消すかのように勢いよく閉めた扉。

再び開く時が来るのだろうか。
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