Three Sounds
「あんたのリズム感のなさには驚いたけどね、ま、いいんじゃない。」
スバルもかけよってきて、アラシが勢いあまって落としたスティックを拾った
。二人の言っていることがちっとも分らず、ぽかんとするしかない。せっかく合わせている演奏を邪魔され、そのうえ妨害もしたのに、なぜ二人は怒らないのか。
「あの、ごめん。でも俺、やっぱ無理だよ、出来ない。二人の…」
「はあ?そんだけいいドラム捌きしてて。謙遜すんなよ。お前、思ったよりいいドラマーだぜ。」
と、ヒカル。
「さっきは…ま、俺も悪かったぜ。分かんない時は教えてやるから、ちょっとずつうまくなればいいじゃん。あ、俺格好いいこと言ったよな。」
「黙れ、フランス人が。国へ帰れ。」
「フランスの何が悪い。うるさいね、ジパングパーソン。」
「テメー! 俺はハーフだしー。」
自分の前方で繰り広げられるケンカを長めながら、ふと思った。よくは分らないけど、頑張ってみようかな。音楽の才能なんて皆無だけど、べつにいっか。やってみることにきっと意味があるんだ。それに、この二人の音楽をもっと聴いていたかったから。
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