田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
あれほど笑いに包まれていた宴席が一瞬にして沈黙に包まれた

しばらくは誰一人言葉を発する事ができなかった

源さんが沈黙を破る

「番頭さん…よく生きていてくれた、これからは旦那の代わりにこの店を盛り上げて欲しい」

「はい…」

「まあ飲め」

源さんは番頭の盃に酒を注いだ

そばにいたヨッコが源さんの盃に酒を注ぐ

しばらくして奥様が目を腫らし出てきた

番頭の前に膝をつくと言った

「番頭さん…よくぞあの人を連れて帰ってくれました…ありがとう…こんなになるまで探してくれて…本当にありがとう…今日はあなた達の赤ちゃんのためのお祝いだから…あなたも父親になるんですからしっかり働いてくださいね」

「とんでもない…こちらこそお願いします」

奥様は袖で残っていた涙を力強く拭き取ると立ち上がった

「皆さん!明日主人のお葬式を出します皆で送ってやってくださいね」

奥様は何かふっきれたようだ

遺された者で前を向いて強く生きていこう

その想いはそこに居る者全てが強く感じていた
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