田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
皆で安堵の溜め息をついたのも束の間おかっさまがお客を案内してきた

「あら?このバケツとぞうきんはどうしたの?」

「あ…いえ今片付けるところです、久しぶりに花を生けたもんですからそそうしてしまいまして…お花いかがでしょう」

「すごくいいわ、ありがとう」

おかっさまとのやりとりをみてお客のひとりが割ってはいる

「はっはっは!幸枝は相変わらずだな、うちの若い衆がしたと言えばよかろうが」

「いえ、わたしが…やっぱり源さんだったんですな、こんなに百合が好きな人珍しいですもん…お変わりない様子で何よりです」

「おまえも元気そうじゃないか」

「ありがとうございます、五十本って五十歳になられたのですか?」

「そうたい、早かもんやな…あれから何年になるかな」

「わすれましたわ」

幸枝が軽くはぐらかす

「親分の知り合いなんですか?」

若い衆が口を挟む

「馬鹿が、人見てものば言わんか!お幸さんお久し振りです」

若頭のシゲが二人の頭をはたく

番頭は相変わらずぽかんと見ている

番頭が幸枝の人脈の広さを初めて知った瞬間である
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