逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


――パシンッ……!



大きな音とともに、もう一度、左頬を強く叩かれた。



「バカなこと言わないで!」



「だってあたし……バカだもん……」



もう……やだ……。



こんな家……こんな生活……。



逃げ出したい……。



「それからね、勘違いよ。あの子は盗んでないわ」



「え……?」



「キーホルダーが玄関に落ちてたって、あの子が私のところに持ってきたのよ。だから、あなたに渡してあげなさいって私が言ったの」



そんな……嘘でしょ……?



のえる……ごめん……。



「そんな小さなキーホルダー盗むほど、あの子に不自由な暮らしさせてないから」



そう言って彼女は、あたしの部屋から出て行った。



最低だ……あたし。



のえるが取ったって思って。



勝手に勘違いして。



「……うっ……っ……」



涙がこぼれてく……。



最低だ……。



あたしは布団の上にうずくまる。



「りん……ちゃん……?」



顔を上げると、赤い目をしたのえるが立っていた。



「だいじょぉぶ……?」



まだこんなに小さいのに。



自分のことより、あたしを心配してくれるんだね。



あたしが手を広げると、のえるは勢いよく抱きついてきた。



のえるの小さな体。小さな背中をそっと撫でる。



「のえる、ごめんね……。あたしが悪かったの」



のえるはあたしの胸で、首を何度も横に振る。



「大声で怒ったりして……本当にごめんね」



「それぇ、りんちゃんの……たからものなのぉ?」



「うん、そう……すごく大切な宝物……」



「おほしさまっ?」



「そーだね、お星様の形……」



のえるの頭を優しく撫でた。



この幼い子に何も罪はない。



だけど、この子を可愛がるのは、



死んだお母さんを裏切るような気がして、つらかった。



離婚してからお母さんには、あたしだけだった。



そんなあたしが、いま裏切った父親と相手の女性と、その子供までも一緒に暮らしてる。



お母さんの気持ちを考えると可哀想でたまらない。



お母さんがいつだってあたしの味方でいてくれたように、



あたしもお母さんの味方でいたい。



あたしは……どうすればいい?



のえると、これからどう接していけばいい……?
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