逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



「くぼっち……」



「ん?」



「笑いながらグサッとくること言うのやめてもらっていい?」



「おーごめん、ごめん。悪気ないから」



あの日、駅のホームで俺は言った。



“いつかまた……逢えるよな?”



咲下は首を横に振って、



俺の手を離した。



俺は最後にしたくなくて。



でもこれが最後なんだと、咲下は答えるかのように、



俺の顔を見ずに行ってしまった。



「まぁ、振られたわけでもねぇか!好きだって咲下に気持ち伝えなかったんだろ?ホントに情けねーなぁ」



「……まだ終わらせたくなかったんだよ」



あのとき、

咲下に気持ち伝えて



振られて



じゃあ諦める?



そんな簡単じゃない。



どーせ振られても諦められないなら、



想ってく。



「俺が気持ちを伝えるのは、咲下を守れる男になったときって決めたから」



「マジメかっ」



俺はため息をついた。



「そのとき振られたら、もう諦めるしかねーけど」



「それって、いつだよ?その間に咲下、他の男に持ってかれるよ?離れてんだからさぁ、なおさら……」



「そうなったら、しょーがないよ。咲下が幸せなら……」



「“咲下が幸せなら俺も幸せ”とか言うなよ?そんなん綺麗事だかんな」



「綺麗事ねぇ……でも他の男に持ってかれたら、自分の想いを断ち切るための理由には十分だろ」



「橘……」



そうなりたくはない。



“咲下が幸せなら俺も幸せ”



想いを断ち切るための理由なんかじゃなくて。



本当は。



俺が咲下を笑わせて、幸せにしたい。



そんな咲下を見て……俺も幸せになりたいよ。



想いを断ち切るための理由なんかじゃなくて、



ふたりが幸せになるときに



この言葉を言えたら……。



そうなれたら、どんなにいいかなって思う。
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