逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



「そんなに好きだなんて……」



「俺にとって、初めて好きになった人だから」



心の中も頭の中も。



キミでいっぱいで。



初恋は特別だと、くぼっちは言っていたけど。



こんなにも自分以外の誰かを好きになるなんて、昔の俺には想像もできなかったんだ。



「橘くんが咲下さんのこと忘れられないっていう気持ち、更紗にもわかるよ」



隣に座ったまま、吉野は俺の目を見つめた。



「更紗も同じだから。フラれてから忘れようと何度も思ったけど、忘れられなかったの」



かすかに震える小さな声。吉野の瞳には、涙が溢れている。



「橘くんのこと……いまも好き……」



そう言った瞬間、吉野の左頬を涙が一筋伝った。



「吉野……」



「更紗はすごくすごく橘くんのことが好きで……橘くんは咲下さんのことがすごくすごく好きで……咲下さんには他の……。恋って難しいね。誰も傷つかない恋なんて、ないのかな……」



きっと、誰も傷つかない恋なんてない。



傷つかない恋は、本物の恋なんかじゃない。



誰かを本気で好きになるには、傷つく覚悟が必要だった。
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