逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


「橘くんは、咲下さんを忘れたいのに忘れられない……?それとも忘れたくないの……?」



「え……?」



「本当に心から忘れたいって思うなら、試してみる?」



吉野は、俺の顔にグッと自分の顔を近づけて言った。



「咲下さんのこと好きなままでいい。橘くんの好きな人が誰でもかまわない。更紗が全部受け止める。橘くんのこと、これから何があっても好きでいる。だから、一緒にいよ……?」



彼女の真っ直ぐな瞳に、俺は目を逸らせない。



「咲下さんのこと、更紗がいつかきっと……忘れさせてあげる……」



床についた俺の手の上に、彼女はそっと手を重ねた。



「だから……試してみて……?」







好きな人のためなら、なんだって。



なんだってできる。



そのためなら、



たとえ、自分を犠牲にしてもかまわない。



好きな人が笑ってくれるのなら。



好きな人が幸せになれるのなら。



なんだってする。



それが、自分の幸せだと信じていたから。



誰もが切ない想いを抱えて、愛しい人のことを想った――。
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