逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


「また三者面談、勝手に断ったそうね」



いつもと変わらず偉そうな態度で腕を組んで立っているのは、のえるの母親。



「今日、学校の先生から電話があったわよ」



あたしは彼女の言葉を無視して、イスから立ち上がり窓際のカーテンを閉める。



「口があるんだから、なんとか言いなさい」



あたしは立ったまま壁に寄りかかり、彼女を睨みつけた。



「今回も先生と二者面談にしました。あたしに母親はいませんから」



「ねぇ、あなた本当に就職するつもり?」



彼女は、あたしをバカにしたように笑って言った。



「ろくにやりたいこともない、資格もなにもない、おまけに情緒不安定で反抗的。それでどこに就職しようとしてるの?世間はそんなに甘くないわよ」



あたしは彼女から顔を背けて、拳をぎゅっと握り小さな声で呟く。



「……ほっといて」



「あなたのお父さんも心配してたわよ?1年間浪人して、大学受験したら?」



「高校卒業したら、すぐにこの家を出ていきます」



彼女は呆れたように大きなため息をついた。



その表情がまたあたしを苛立たせる。



「ほんっと、口だけはいつも偉そうね」



「話が終わったんなら、早く出て行ってもらえません?」



彼女は窓際のデスクに近づき、あたしの詩のノートを手に取った。



「ちょっと、あたしのモノに勝手に触んないでっ!」



「なにこれ?フッ……くだらないこと書いてる暇があるなら、勉強しなさいよ」



アンタなんかに何がわかんの?



あたしの何がわかんの?



ノートを取り返そうと、あたしは彼女の腕につかみかかる。



その時、



――バサッ。



彼女は部屋のゴミ箱にあたしの大切なノートを捨てた。
< 324 / 528 >

この作品をシェア

pagetop