TENDRE POISON ~優しい毒~

「あ!お前」


あたしが逃げるより早く、保健医があたしを見つけるのが早かった。


あたしは回れ右をしようとしていた足を止め、保健医たち団体客に向き直った。


団体客は男女六人組。


合コンだろうか。妙に打ち解けてない様子から察した。


エロ保健医が合コン。何か言われたらこれをネタにしよう、なんて考えてると、



「あれ?鬼頭……」


六人の後ろのほうに隠れてたやつがひょっこり顔を出した。




何で……



何であんたがこんなところにいるんだよ。



飲み会って、合コンのことだったの……?






「お前。今何時だと思ってるんだ?」


保健医が大人ぶった口調であたしを咎める。


「なぁに?生徒さん?」女の一人が言った。


何甘ったるい声出してんだよ。気持ち悪い。



「まぁまぁ、先生」と現国の和田も一緒だ。





あたしの中はわけもわからない苛立ちで支配されていた。






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