TENDRE POISON ~優しい毒~



「分かったよ。先生があの保健医を好きな気持ちは理解できた。それを言う為わざわざ呼び出したっていうの?」


あたしの言葉に神代はちょっと瞬きをして、すぐに顔を伏せた。


「……うん、ごめん」


「別に。……あたし、気持ち悪いとか思わないから、がんばってね」



ホントにがんばって。


あんたが頑張れば頑張るほど、あんたは泥沼にはまっていく。


あたしがはめるんだから。





そう心の中で言ってお弁当の蓋を開ける。


今日は昨日の残りのから揚げと卵焼き、ひじきの煮つけと枝豆だった。



神代はどこかしらほっとしたように胸を撫で下ろすと、


「おいしそうだね」とあたしのお弁当を覗き込んだ。


「自分で作ってくるの?」


「他に誰もいないからね」そっけなくあたしは卵焼きを口に入れた。



塩入れすぎたかな?ちょっと辛い。


そんなことを考えてると、神代の視線を感じてあたしは手を止めた。


「なに?欲しいの?」


「いや!」神代が慌てて手を振る。



「先生は毎日学食?この前ラーメン食べてるの見た」


保健医と肩を並べて食べてたっけ。


そのときは単なる仲良しだと思ってたけど。


「僕はほとんど学食。料理苦手だから」神代は苦笑い。


「今日は?コーヒーだけ?」


「うん。二日酔いで食欲ないんだ」


神代は少し辛そうに俯いた。


なんだ……


顔色の悪さは二日酔いのせいだったんだ。



あたしは我知らずほっと胸を撫で下ろしていた。





< 172 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop