TENDRE POISON ~優しい毒~
「……あの、あたし急に押しかけてごめんなさい。でもどうしてもさっきの言葉が納得いかなくて」
「さっきって?」
この言い方は冷たかったかな?
体中から力が抜けた。糸を切られたマリオネットのように僕はだらりとソファに身を沈めた。
「誠人くんが好きだって言うこと」
「納得いかなくても、それが変えようもない事実なんだし……」
「じゃぁあの子とは何もないの?」エマさんが言葉をかぶせる。
「何もって、そもそも彼女は生徒だ。そんな目で見られないよ」
僕は嘘をついた。
小さな嘘を。
「だって一緒に住んでるみたいだった」
「ちょっと預かってるだけだって。第一彼女未成年だよ。一緒に住めるはずがない」
どうしてこうなのだろう。
好きだったら、その人の言葉を信じるべきじゃないのだろうか。
いや、これは僕の勝手な言い訳だ。
エマさんが疑うのは当然のことだ。
好きだから、疑心暗鬼になる。
好きって気持ちはどうしてこう厄介なのだろう。
全ての考えを拭い去りたくて僕は顔を覆った。