TENDRE POISON ~優しい毒~

「その誰かがお前を止めてくれたのは事実だけど、決定打を下したのは―――


きっと乃亜だ」



その誰か、は神代 水月だった。


あの時はそんなこと想像もしてなかったけど。




「……うん」


あたしは顔を前に向けると静かに頷いた。


白い息だけが空中でふわりと浮かんで消えた。




「乃亜はホントはお前に復讐なんてしてほしくなかったんだよ。


お前には幸せになって欲しかったんだよ」


「うん」


「乃亜は生きてる。生きてるんだ―――お前の幸せを願って、生きることを選んだ。



だからお前はぜってー幸せになれ」



「うん」



何でかな。



目の前が霞がかって視界が滲んでるよ。


きっと舞い降る雪のせいだね。


街灯が、路面が、町並み全体が化粧を施したみたいに、きれいに輝いてる。


でもこれはきっと―――雪だけのせいじゃない。






お姉ちゃん、お兄ちゃん





ありがとう。











< 473 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop