TENDRE POISON ~優しい毒~
「その誰かがお前を止めてくれたのは事実だけど、決定打を下したのは―――
きっと乃亜だ」
その誰か、は神代 水月だった。
あの時はそんなこと想像もしてなかったけど。
「……うん」
あたしは顔を前に向けると静かに頷いた。
白い息だけが空中でふわりと浮かんで消えた。
「乃亜はホントはお前に復讐なんてしてほしくなかったんだよ。
お前には幸せになって欲しかったんだよ」
「うん」
「乃亜は生きてる。生きてるんだ―――お前の幸せを願って、生きることを選んだ。
だからお前はぜってー幸せになれ」
「うん」
何でかな。
目の前が霞がかって視界が滲んでるよ。
きっと舞い降る雪のせいだね。
街灯が、路面が、町並み全体が化粧を施したみたいに、きれいに輝いてる。
でもこれはきっと―――雪だけのせいじゃない。
お姉ちゃん、お兄ちゃん
ありがとう。