TENDRE POISON ~優しい毒~
あたしこの1年間、乃亜姉の復讐のことでいっぱいで周りがよく見えてなかったんだ。
全てが終わると、目の前に広がった視界は色鮮やかに姿を現した。
ううん。それに目を向けようとしてなかったのはあたしだ……
気がつくと、世界はこんなに輝いていた。
こんなにも美しいものだった。
それと同時にあたしは願った。
乃亜姉の目に映る景色も同じ色で輝いているといいな、と。
あたしは手をポケットに突っ込んだ。
「じゃ。いい結果を待ってる」
くるりと明良兄に背を向ける。
「雅!」
あたしの背中に明良兄の声が呼びかける。
あたしは首だけを後ろに捻ってちょっと振り返った。
「乃亜が……」
「ん?」
「……乃亜が、目覚めたのはお前の復讐を止めるためだ。
いつか言ったよな。お前を止められる奴は俺でもなく、乃亜でもない。
お前の中に住み着いてるたった一人だってことを」
覚えてるよ。