TENDRE POISON ~優しい毒~
「ご、強姦罪で訴えてやる!」
あたしは余裕の保健医の後ろ姿に向かって怒鳴った。
保健医はくるりと振り返ると、にやりと笑みを湛える。
「どうぞ、お好きなように。俺はこの学校にいたくているわけじゃないんでね」
なんて奴―――!
「あんた神代の何なの?友達のため?友達でもここまでしないよ!」
「水月とは親友。大学時代からのね」
保健医は机と対になってる椅子に優雅に腰掛けた。
「友達だから……大切な奴だから、ここまでするんじゃない?」
投げかけれた視線や言葉をあたしに向けられているのに、その感情はどこか遠くを彷徨っているように思えた。
だけど
―――『大切な奴だから』
その言葉があたしの心に沈む。
あたしだって乃亜の為に、やろうとしてることはこいつと変わりない。
あたしがやろうとしてることは……
正しいことなのだろうか―――?