獅子が招いてくれた恋
「あれ、まこちゃん?」
『あ、はい!』
いきなり愛称で呼ばれて少しびっくりした。
「やっぱりまこちゃんだったか。この頼りないお兄さんは」
『は、はあ…』
サンダル娘の正体が分からないまま次の休憩所に着いた。
「あたし、御輿メインじゃないからあんまり担げないんだ」
『あ、はい…』
「だからかえでたちと上手く盛り上げて指揮とってね」
御輿を下ろした後、サンダル娘は淡々と喋った。
「あたしお神楽行くから。かえで、まこちゃんをよろしく!」
「わかったよ!お姉ちゃん」
サンダル娘は行ってしまった。
背中に斜め掛けした細長い袋から横笛を出して。
もう始まっている、獅子が舞っている方へ。
神楽保存会のおっさんたちに紛れて笛を吹く姿が意外とかっこよく見えた。
〈まことside、夏の失態〉